歯周病治療
歯周病は歯を失うだけでなく全身の健康にも影響します。
自覚症状なく進行するため、定期的な検診とメンテナンスが不可欠です。
お忙しい方でも通いやすい1回完結のメンテナンスもご用意しています(汚れが軽度の方のみ可能です)。
重度の歯周病の方には、専門医による歯周組織再生療法といった高度な治療も可能です。
あなたの歯は大丈夫ですか?日本人の多くが罹患する歯周病

「歯磨きをすると、時々歯ぐきから血が出る」「朝起きた時、お口の中がネバネバする」
多くの方が一度は経験したことのある些細な症状かもしれません。
しかし、その背後には、あなたの歯の寿命を静かに脅かす非常に大きな問題が隠れている可能性があります。
それが「歯周病」です。歯周病は「サイレント・ディジーズ(沈黙の病気)」という異名を持つほど、初期段階では痛みなどの自覚症状がほとんどないまま進行します。
歯ぐきからの出血は、体からのSOSサインです。
それを見過ごし「たいしたことはない」と放置しているうちに、歯を支える大切な土台である顎の骨が気づかぬうちに溶かされていくのです。
実は、成人が歯を失う原因の第一位は、むし歯ではなく、この歯周病であるという事実をご存知でしょうか。
ある日突然、歯がぐらぐらし始め、慌てて歯科医院に駆け込んだ時には、すでに手遅れで抜歯しか選択肢がない。
これは決して他人事ではありません。しかし過度に恐れる必要はありません。
歯周病はそのメカニズムが解明されており、正しい知識を持ち、適切な時期に適切な処置を行うことで、その進行を食い止め予防することが十分に可能な病気です。
ご自身の歯で一生涯にわたって食事を楽しみ、心から笑える毎日を送るために。まずは歯周病について、正しく知ることから始めましょう。
歯を支える土台が壊れていく歯周病

歯周病の原因は「細菌の塊」
歯周病を引き起こす直接の原因は、「プラーク(歯垢)」と呼ばれる、お口の中に潜む細菌の塊です。
プラークは、単なる食べカスではありません。わずか1mgのプラークの中には、実に数億から数千億個もの細菌が生息していると言われています。
この細菌たちが作り出す毒素によって、歯ぐきに炎症が引き起こされるのです。
日々の歯磨きで落としきれなかったプラークは、唾液に含まれるカルシウムなどのミネラル成分と結びつき、やがて石のように硬い「歯石」に変化します。
歯石そのものが直接悪さをするわけではありませんが、その表面は軽石のようにザラザラしているため、新たなプラークが付着するための絶好の場所となってしまいます。
そしてこの歯石は一度付着してしまうと、ご自身の歯磨きだけで取り除くことはできません。
これが歯科医院での専門的なクリーニングが不可欠である理由です。
歯周病の進行段階
歯周病は、一夜にして重症化するわけではありません。長い年月をかけて、静かに、そして着実に進行していきます。
| 段階 | 歯周ポケットの深さ | 症状・特徴 |
| 健康な歯肉 | 正常 | 薄いピンク色、シャープで引き締まった状態、弾力があり出血しない |
| 歯肉炎 | 正常 | 赤みを帯び腫れぼったい、ブラッシング時に出血しやすい |
| 軽度歯周炎 | 3mm~4mm | 歯槽骨が少しずつ溶かされ始める、自覚症状は少ない |
| 中等度歯周炎 | 4mm~6mm | 歯のぐらつき、出血・腫れが顕著、口臭、歯が浮いた感覚 |
| 重度歯周炎 | 6mm以上 | 大きなぐらつき、硬いものが噛めない、自然に膿が出る |

健康な歯肉
健康な歯ぐきは、薄いピンク色をしており、歯と歯の間にシャープに入り込んで、全体がキュッと引き締まっています。
弾力があり、正しいブラッシングで出血することはありません。
歯肉炎
歯周病の最も初期の段階です。プラークが出す毒素によって、歯ぐきに炎症が起きた状態で、赤みを帯びて少し腫れぼったくなります。
ブラッシングの際に、出血しやすくなるのが特徴です。この段階では、まだ歯を支える骨に影響はありません。
そのため、丁寧なブラッシングと歯科医院でのクリーニングによってプラークと歯石を徹底的に除去すれば、完全に元の健康な歯ぐきに戻すことが可能です。
軽度歯周炎
炎症がさらに広がり、歯と歯ぐきの間の溝(歯周ポケット)が深くなり始めます。
歯を支えている顎の骨(歯槽骨)が、少しずつ溶かされ始めるのもこの段階です。
歯周ポケットの深さは、3mm~4mm程度。自覚症状はまだ少ないですが、病気は着実に進行しています。
中等度歯周炎
歯周ポケットは4mm~6mmとさらに深くなり、細菌がより深部へと侵入していきます。
顎の骨の破壊も進み、歯を指で押すと、少しぐらつきを感じるようになります。
歯ぐきからの出血や腫れが顕著になり、口臭が強くなったり、歯が浮いたような感覚を覚えたりすることもあります。
重度歯周炎
歯周病の末期的な状態です。歯周ポケットは6mm以上にもなり、顎の骨の大部分が溶かされてしまっています。
歯は大きくぐらつき、硬いものが噛めなくなります。歯ぐきからは、自然に膿が出ることさえあります。
この状態を放置すれば、やがて歯は支えを失い、自然に抜け落ちてしまいます。
こんな症状は要注意です
以下の項目に一つでも当てはまる方は、歯周病が進行している可能性があります。お早めにご相談ください。
- 歯磨きの時に歯ブラシに血が付く
- 歯ぐきが赤く腫れている、または紫色になっている
- 歯ぐきがむずがゆい、または痛みがある
- 朝起きた時、口の中がネバネバする
- 口の臭いが気になるようになった
- 歯と歯の間に、食べ物が詰まりやすくなった
- 歯が以前より長くなったように見える
- 歯ぐきを押すと、白い膿のようなものが出る
- 歯がぐらぐらと動く
お口だけの問題ではない
歯周病がもたらすリスク
歯周病はお口の中だけの病気だと思われがちです。
しかし近年の研究により、お口の中の歯周病菌が全身の様々な疾患に深刻な影響を及ぼすことが明らかになってきました。
歯周病菌やそれによって生じる炎症物質が、歯ぐきの血管から体内に入り込み、血液の流れに乗って全身を駆け巡るのです。

全身の健康を脅かす歯周病菌
糖尿病
歯周病は、かつて糖尿病の「第6の合併症」と呼ばれていました。
現在では、歯周病と糖尿病は相互に悪影響を及ぼしあう、密接な関係にあることが分かっています。
糖尿病になると、体の免疫力が低下するため歯周病が悪化しやすくなります。
逆に、歯周病による炎症は、血糖値をコントロールするインスリンの働きを阻害するため、糖尿病を悪化させる一因となるのです。
歯周病の治療を行うことで、血糖コントロールが改善したという報告も数多くあります。
心臓・血管疾患
歯周病菌の出す毒素が、動脈硬化を引き起こす物質の発生を促すことが指摘されています。
これにより、血管の壁が厚く、硬くなり、血液の通り道が狭くなってしまいます。
その結果、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる重大な病気を引き起こすリスクが高まるのです。
誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)
これは特に、ご高齢の方や寝たきりの方において注意が必要な疾患です。
食べ物や唾液が、誤って食道ではなく気管に入ってしまう「誤嚥」が起こった際、唾液に含まれる歯周病菌が肺にまで侵入し、肺炎を引き起こします。
日頃からお口の中を清潔に保つ専門的な口腔ケアが、誤嚥性肺炎の予防に極めて重要です。
早産・低体重児出産
妊娠中の女性が歯周病にかかっている場合、歯周病菌による炎症物質が血中に入り、子宮の収縮を促してしまうことがあります。
その結果、通常よりも早く陣痛が起こり、早産や赤ちゃんが標準より小さい体重で生まれてくる低体重児出産のリスクが高まることが報告されています。
当院の歯周病治療プログラム
歯周病治療の成功の鍵は、正確な診断と病状の進行度に合わせた適切な治療計画にあります。
当院では、科学的根拠に基づいた体系的な治療プログラムを実践しています。
STEP 1:精密な検査と現状の把握
治療を始める前に、まずは患者様のお口の状態を正確に把握するための精密な検査を行います。

歯周ポケット検査
「プローブ」という専用の器具を使い、歯と歯ぐきの間の溝の深さを一本一本丁寧に測定します。
出血の有無なども記録し、歯周病の進行度を判断する基本的な情報となります。

レントゲン・CT検査
歯ぐきに隠れて外からは見えない、歯を支える骨の状態を確認します。
どの部分の骨が、どの程度失われているのかを視覚的に把握することで、より的確な治療計画を立案できます。

口腔内写真撮影
現在のお口の状態を写真で記録します。
ご自身の目で客観的に状態を見ていただくことで、治療への理解を深めていただくとともに、治療後の改善度を比較するためにも役立ちます。
私たちは、これらの検査結果を元に、患者様ご自身に現状をしっかりとご理解いただくことを治療のスタートラインとしています。
STEP 2:歯周基本治療(原因の徹底除去)
歯周病治療の根幹をなすのが、この歯周基本治療です。原因であるプラークと、その温床となる歯石を徹底的に取り除くことを目的とします。

TBI(ブラッシング指導)
どんなに歯科医院で専門的な治療を受けても、ご家庭での日々のセルフケアが不十分では、歯周病は決して良くなりません。
自己流の磨き方では、どうしても磨き残しが生まれてしまいます。
当院では、歯科衛生士が患者様一人ひとりのお口の状態や歯並びに合わせた、最も効果的な歯ブラシの当て方、動かし方を丁寧にご指導します。

スケーリング
超音波の振動で歯石を粉砕する「超音波スケーラー」や、手用の器具「ハンドスケーラー」を用いて、歯の表面や歯周ポケットの比較的浅い部分に付着したプラークや歯石をきれいに除去していきます。

ルートプレーニング
スケーリングだけでは届かない、歯周ポケットの深い部分、歯の根(ルート)の表面にこびりついた硬い歯石や細菌に汚染された歯の表層を、特殊な器具で丁寧に掻き出し、表面をツルツルに仕上げる処置です。
歯の根の表面を滑沢にすることで、プラークの再付着を防ぎ、歯ぐきが再び歯に引き締まって付着するのを助けます。
STEP 3:歯周外科治療(進行した場合の選択肢)
歯周基本治療を行っても、なお深い歯周ポケットが残ってしまったり、骨の破壊が著しかったりする場合には、より積極的な外科的アプローチが必要となることがあります。
フラップ手術
歯ぐきに麻酔をした上で、部分的に切開し、骨から剥がします。
これにより、歯の根の表面を直接目で見て確認できるようになるため、基本治療では取りきれなかった深部の歯石や汚染物質を徹底的に除去することが可能になります。
処置後は、歯ぐきを元の位置に戻して縫合します。
歯周組織再生療法
歯周病によって失われてしまった骨などの歯周組織を、特殊な材料を用いて再生させる、より高度な治療法です。
フラップ手術と同様に歯ぐきを切開した後、骨が失われた部分に、骨の再生を促す薬剤や骨の元となる補填材を入れ、特殊な膜で覆うことで、組織が再生するためのスペースを確保します。
治療の成功を維持するために最も重要な「メンテナンス」
なぜメンテナンスが必要なのか
一連の治療が終わり、歯ぐきの状態が改善したとしても、それで終わりではありません。
歯周病は、高血圧や糖尿病と同じ「生活習慣病」の一つであり、非常に再発しやすい病気です。
治療によって健康を取り戻したお口は、いわば「病み上がり」の状態です。
一度破壊された組織が完全に元通りになるわけではなく、多くは弱い結合で治癒しています。
そのため、治療前と同じようなケアのままだと、お口の中の細菌は再び勢力を増し、容易に再発してしまうのです。
また、ご自身の毎日の歯磨きで、プラークを100%除去することは残念ながら不可能です。
特に、歯周病にかかったことのある深い歯周ポケットの底や、歯並びが複雑な部分には、どうしても磨き残しが生まれます。
この、ご自身では取りきれないプラークを定期的にプロフェッショナルの手で徹底的に除去し、再発のリスクを抑えること。それが、メンテナンスの目的です。

お忙しい方にも通いやすい当院のメンテナンス
「治療後のメンテナンスは、何度も通わなければいけないのでは?」お仕事や家事でお忙しい方にとって、通院回数は気になる点だと思います。
当院では、歯科衛生士の熟練した技術と効率的なプログラムにより、患者様のご負担をできる限り軽減することを心がけています。
歯ぐきの状態が安定している患者様につきましては、必要な検査と専門的なクリーニングを凝縮し、基本的に1回のご来院でメンテナンスを完了しております。
もちろん、歯周病の状態やお口の中のリスクの高さに応じて、集中的なケアのために複数回に分けさせていただくこともありますが、それはあくまで患者様の長期的な健康を第一に考えた上でのご提案です。
毎回同じ歯科衛生士でのクリーニングをご希望の場合は、ご予約時にお知らせください。
衛生士が継続してあなたのお口を拝見することで、前回からの僅かな変化も見逃さず、よりきめ細やかなサポートが可能になります。
治療で取り戻した健康を、私たちと一緒に、生涯にわたって守り育てていきましょう。